(写真提供:粟倉輝彦(1,3))

または

ブラウザの「戻る」で前頁へ

写真2.直腸内部に寄生している虫体。

写真1.ヤマメの内臓に多数みられた鉤頭虫.

写真3.Acanthocephalusの吻部。

寄生虫名 Acanthocephalus minor(アカントケファルス・マイナー)
分類学 鉤頭動物門、古鉤頭虫綱、鉤頭虫目
宿主名 ヤマメ(Oncorhynchus masou masou)、他サケ科魚、ウキゴリ(Chaenogobius annularis
病名 アカントケファルス症
寄生部位 腸管内
肉眼所見 通常、外観的な異常は見られない。剖検的には、数mmから20 mm程度の虫体が主に直腸内に寄生しているのが観察できる(写真1,2)。
寄生虫学 虫体は数mmから20 mmで、吻部、頸部および胴部からなり、宿主の腸壁に吻部を穿入させて寄生する。雌雄異体で、宿主の腸管から水中に放出された虫卵は、中間宿主である等脚類のミズムシ(Asellus hilgendorfi)に取り込まれる。その後、本虫が寄生したミズムシを捕食することで魚類は感染するため、河川においてはミズムシが多く生息する淵を住処とする魚に本虫が多く寄生することが知られている(Nagasawa et al., 1982)。
病理学 魚に対する影響は大きくないと考えられるが、詳細は不明である。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 直腸周辺に寄生する虫体は、肉眼で容易に観察できる。虫体は、吻部、頸部および胴部からなることにより鉤頭虫であると同定できる(写真3)。ただし、日本の養殖サケ科魚類からは本虫の他にA. opsariichthydisA. acerbusおよびA. lucidusが報告されており、これらの識別には詳細な形態観察が必要である。
その他の情報 魚に対する影響が小さいと考えられているため、駆虫法などは開発されていない。予防対策としては、残餌や排泄物の除去を徹底することで中間宿主であるミズムシの繁殖を抑えることが重要である。
参考文献 Nagasawa, K., S. Egusa and K. Ishino (1982): Occurrence of Acanthocephalus minor (Acanthocephala) in two types of the goby, Chaenogobius annularis. Japan. J. Ichthy., 29, 229-231.